2012年4月10日火曜日

過敏性腸症候群と漢方薬


過敏性腸症候群とは

 腸がさまざまな刺激により過敏に反応してしまうことで下痢や腹痛を起こしてしまう病気です。
 過敏性腸症候群の英語名であるIrritable Bowel Syndromeの頭文字をとってIBSとも呼ばれます。

 専門書や病気の解説サイトなどには「器質的な異常が見られない」「機能性の疾患である」というように紹介されます。この表現は一般の方にはわかりにくいですが、簡単にいえば「腸に炎症や傷があるわけではないが、しっかりと働いてくれない」状態を指しています。

 しばしば、漢字が並んだ長い病名であり同じ「腸」の字が入ることから潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)と混同されている方もいらっしゃいますが、潰瘍性大腸炎は大腸(おおくは大腸の直腸)に原因不明の炎症が起こり下痢や血便を起こす、過敏性腸症候群とはまったく異なった病気です。


原因

 過敏性腸症候群を引き起こす特定の原因は示されておらず、個人差が大きいといわれています。そのなかでも通勤や通学の際やテストやスピーチの前など緊張状態によって症状が現れることが多いことからストレス、不安感、恐怖といった精神面が引き金となっている可能性が高い病気とされています。

 それ以外にもカロリーの高い高脂肪食の摂り過ぎなどが代表的な原因として挙げられます。高カロリー食以外にも乳製品やコーヒーを含むお茶類、橘類なども症状を悪化させることが示唆されています。

 過敏性腸症候群には性差も認められており、男性の方が女性よりも約3倍もかかりやすいという報告もあります。したがって、遺伝子レベルから文化社会的背景をともなった性差(ジェンダー)まで幅広い原因が潜んでいる可能性も考えられそうです。


症状

 過敏性腸症候群はさまざまな刺激によって消化管(小腸や大腸)が強い収縮を起こし、痛みをともなった下痢を起こす病気です。

 下痢は突然始まり、強い便意や下腹部痛をもたらすので日常生活に支障をきたすだけではなく、「また下痢になってしまうのではないか…」という不安感にも苦しめられることになります。


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 過敏性腸症候群の原因はさまざまでしたが症状も個人差が多く、下痢と腹痛などの典型的な症状の他に便秘をはさむものや腹部の張り、吐気、頭痛、疲労感などを呈する場合も多いです。


西洋医学的な治療法

 過敏性腸症候群は腸の過度な収縮などにより下痢症状が起こるので、この筋肉収縮を緩和する抗コリン薬と呼ばれる鎮痙薬がおもに用いられます。それ以外にも神経伝達物質であるセロトニンの受容体に働きかける薬も下痢や便秘に有効です。

 上述のとおり、過敏性腸症候群は精神面の影響を無視できない病気なので抗うつ薬なども用いられますが、抗うつ薬はふらつき・眠気・吐気などの副作用も現れやすいので注意が必要です。

 薬物治療以外にも精神的ストレスが原因として明白な場合はカウンセリングを中心とした認知行動療法などが行われることもあります。


漢方医学からみた過敏性腸症候群

 漢方医学的に過敏性腸症候群をながめると、その原因は大きく分けて2つ考えられます。
 ひとつは脾胃(ひい)の問題です。脾胃とは簡単に表現してしまえば腸を含めた消化器のことを指します。そしてもうひとつが肝(かん)の問題です。肝とはアルコールを解毒したりする西洋医学的な肝臓のことではなく、気の流れをコントロールしたり血をたくわえる働きをもつとされる漢方医学的な肝を指します。
 ではまず、脾胃と過敏性腸症候群について関連性について説明します。繰り返しになってしまいますが脾胃は西洋医学的には消化器であり、この消化器の働きが弱くなってしまった状態を脾気虚(ひききょ)と表現します。脾胃は食べ物から人間に必要な気・血・津液(しんえき)� ��生産に関わる「エネルギー工場」のような存在です。このエネルギー工場が何らかの原因で「操業停止」になってしまうと下痢を中心とした消化器症状だけではなく、疲労感・倦怠感・息切れ・めまいやふらつきなどの多彩な症状が現れます。脾気虚の方は普段から疲れやすくて体力がない虚弱体質気味といえるでしょう。脾気虚に陥ってしまう原因としては栄養不足・慢性病後の体力消耗・過労などが挙げられます。


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 それでは脾胃につづいて肝についてです。肝は気の円滑な流れをコントロールしており、正常に気が流れていれば心身ともに健康な状態が保たれます。しかしながら、この肝は精神的ストレスに敏感であり、比較的簡単にダメージを受けてしまいます。その結果、肝がしっかりと働けなくなってしまうと気の流れが滞り、イライラ感や胸・喉に閉そく感を覚えるなどの症状が出てきます。このような症状を肝気鬱結(かんきうっけつ)と呼びます。そして、肝気鬱結をほっておくと気の滞りは脾胃にも悪影響を及ぼします。脾胃は人間のエネルギー源である気・血・津液を作り出しますが、脾胃自体も働くために気が必要だからです。したがって、気の滞りによって脾胃もしっかりと働かなくなり下痢や便� �・下腹部痛・下腹部の張り・食欲不振・ゲップ・吐気・嘔吐などの症状が現れます。

 他にも漢方医学的な過敏性腸症候群の原因はいくつも考えられますが、大筋で精神的ストレスと過労が主な原因と考えて良いでしょう。この点は西洋医学な観点とほぼ共通していると考えられます。


過敏性腸症候群に対応する漢方薬

 上記で紹介したとおり、過敏性腸症候群の原因は漢方医学的に考えると大きく分けて脾気虚と肝気鬱結が挙げられました。したがって、それらを解消することが治療につながります。

 消化器の力が低下している脾気虚は気の不足なので、気を補う漢方薬である補気剤(ほきざい)を使用することになります。補気剤を構成する代表的生薬は人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、黄耆(おうぎ)、山薬(さんやく)などが挙げられます。これらから構成される補気剤を服用することで脾胃の力が増し、食べ物からしっかりと気・血・津液が生まれるようになります。そして、気が充実してくれば消化器がしっかり働くようになり、下痢や疲労は回復してゆきます。


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 そして消化器の力を鈍くしてしまう肝気鬱結の解消には、肝の働きを助けてあげる必要があります。より具体的には気が流れやすくすることが重要になります。気の巡りを改善する代表的な生薬は柴胡(さいこ)、枳実(きじつ)、陳皮(ちんぴ)、香附子(こうぶし)、厚朴(こうぼく)、薄荷(はっか)などが挙げられます。これらに加えて肝に血を与えることでその力を回復させるために当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)、竜眼肉(りゅうがんにく)などの血を生み出す生薬もしばしば使用されます。しかし、血を補う生薬は胃に負担をかけることもあるのでその方の体質にしたがって使用は慎重に行われます。

 このように漢方薬は同じ過敏性腸症候群であっても症状や体質によって大きく内容が変わってきます。漢方薬を継続的に服用することで悩まれている症状だけではなく、病気のより根本的な原因までも取り除くことができるようになります。身体は元来、病気に打ち勝つための力とバランスを保つ能力が備わっています。漢方薬はそれらの力を根本から底上げする「お手伝い」ができるのです。


生活面での注意点と改善案

 漢方薬の服用によって病気に打ち勝つ力になると説明しましたが、日々の生活面を見直すことも過敏性腸症候群に対抗するための有効な手段となります。

 過敏性腸症候群は西洋医学的にも漢方医学的にもストレス、特に精神的なストレスの影響を強く受けていると考えます。ストレス社会といわれる今日において精神的ストレスを完全に消し去ることは非常に困難ですが、過敏性腸症候群が身体にかかっている負担にたいする「警報」をならしているということは覚えておいて頂きたいと思います。
 過剰な仕事を抱え込まない、趣味の時間を大切にする、しっかりと睡眠をとるといった基本的なことが重要となってきます。


 さらに過敏性腸症候群は消化器の病気ということもあり食事面の改善も有効です。まず、強いアルコールや辛いものなどの刺激物は炎症を悪化させる可能性があるので控えた方が良いとされています。脂肪が多い食品や乳製品も人によっては症状を悪化させることがあるようなので注意が必要です。
 その一方で食物繊維の豊富な食品を摂ることで下痢や便秘症状の両方が改善することも知られているので暖かい温野菜などを積極的に食べることが推奨されます。
 食事の回数を多くして食べる量を減らすことも有効です。しかしながら、多忙な生活を送る方が多い今日、なかなか実現は困難だとも感じられます。ですが、「朝食を抜いて一日二食・夕飯は大食いの早食い」という状況は見直すべきです。� ��日三食でゆっくり質量ともにバランスをとることが大切です。

 漢方医学的にも食事面の改善は重視されます。すでに述べた刺激物だけではなく冷たい食べ物や水分を多く含んだ食べ物は脾胃の力を弱めてしまうので控えた方が良いでしょう。具体的にはサラダ、フルーツ、清涼飲料などです。サラダやフルーツは食物繊維を含んでいるので良いのですが、多くの場合は冷えたまま摂ることが多くなってしまいます。サラダは温野菜へ、フルーツはせめて常温にして食べることが望ましいです。
 しばしば、胃腸が弱い方はその改善を目的としてヨーグルトを多く摂られていますが、やはり上記と同じ理由で常温またはすこし温める方が良いです。


おわりに

 近年、過敏性腸症候群を患われている方がとても多くなった印象を受けます。やはりストレス社会と呼ばれる今日の世相を反映しているのかもしれません。
 漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来店されます。そして漢方薬を服用し始めてから、症状が好転する方がとても多くいらっしゃることから、過敏性腸症候群と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。
 是非一度、過敏性腸症候群でお悩みの方は当薬局にご来店ください。お力 になれると思います。

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